「わが社は全社を挙げてマーケティングを中心に経営を行っている。」そう自信を持って断言できる経営者がどれだけ日本にいるでしょうか。重要なことだとはわかっているつもりでも、マーケティングを自社の経営の中心的テーマとして位置付けている企業はまだまだ少ないようです。

そもそも日本企業は、欧米企業に比べてマーケティングを軽視している傾向があります。その理由の一つには、日本企業がかつて「ものづくり」によって大きな成長を遂げたという過去の成功体験があるのではないでしょうか。「いいものを作れば売れる。いいものさえ作ればマーケティングのような小細工は必要ない」と考える人は今も少なくありません。しかし、その一方でマーケティングやブランディングに長けた欧米企業や、低価格を前面に打ち出したアジア企業に次々とシェアを奪われていっているのも事実です。

もちろん、今もものづくりは日本の大きな強みではありますが、さすがにその一本槍だけでは厳しいグローバル競争を勝ち抜くことはできません。そこで新しい武器となり得るのがマーケティングです。人によってはマーケティングというと広告宣伝のことばかりが頭に浮かんでしまうかもしれませんが、そのイメージは決して正しくありません。マーケティングという概念は時代とともに拡大しており、たしかにかつては販売支援というような意味合いで使われることも多くありましたが、今では事業活動全体の設計を指し示すほど大きく広がっています。「ものづくり」の概念もマーケティングの4Pの「プロダクト(製品)」の中に包含して、商品開発からチャネル戦略までバリューチェーン全体を統合的にとらえるべきできるでしょう。そして、その全体のマネジメントを担うべき存在がCMO(マーケティング最高責任者)です。

CMOを中心に、企業をものづくり集団からマーケティング集団にグレードアップさせるための、組織変革のポイントは3つあります。第一に、マーケティング部門に予算と責任を集約することです。組織図上はマーケティングも財務や生産などの他部門と並列であっても、予算と責任を集約することで実質的にマーケティング部門が事業戦略を主導することができます。第二に、マーケティング以外の部門にも担当ブランドの数字目標達成の責任の一端を課すことです。これが、直接のレポートラインではないマーケティング部門の人間が、他部門のスタッフを動かすための仕組みとなります。第三に、他部門との定期的なクロスファンクショナル会議を設定することです。とはいえ、部門を超えて定期的に人を集めるのは困難を伴うことが多いのも事実でしょう。その場合は、新商品ローンチや戦略製品の大規模リニューアルなど、全部門に関わる重要テーマを毎年1つ設定することで、会議体に必然性を持たせるのも実務上は有効となります。

実際、大手外資系メーカーの中にはマーケティング部門が組織の中心となって競争力を高め、高い成長率を実現している企業も少なくありません。今の時代こそ、経営戦略のイニシアチブを取るべきはマーケティング部門であり、それを統率するCMOであると言えるでしょう。