■日本におけるCMOの現状

マーケティングの大家であるフィリップ・コトラー氏は、2013年に来日した際、日本企業に対する重大なメッセージを残してくれました。「日本にCMOがいないというのは残念なこと。欧米では多くのCMOがいて互いに学び合っている。CMOの組織体制については、ぜひ日本企業に検討してほしい。」

2013年に経済産業省が実施した調査(※1)によれば、CMOを任命している企業の割合は、米国が62%(フォーチュン500社ベース)、日本が0.3%(時価総額上位300社ベース)と、日本ではほとんど設置されていないということがわかります。

 

■CMOの役割とは?

そもそも、CMOとはどのような存在なのでしょうか。具体的な人物像としては、P&G出身のジム・ステンゲル氏が挙げられます。ステンゲル氏は2001年から2008年までP&GのグローバルCMO(P&GではGMO:Global Marketing Officerと呼ばれている)を務め、2011年には米国フォーチュン誌が選ぶエグゼクティブ・ドリームチームのCMOに選出されています。

彼がP&Gでどのような役割を果たしていたのかというと、全社最適をミッションとしたコーポレート部門の立場から、グローバルでのマーケティング関連のナレッジ共有や、人材育成のためのトレーニングプログラム、あるいは戦略フレームワークの開発、マーケティング成果の指標作りなどを担っていたそうです。ポイントは、彼が事業部門やマーケティング部門などのフロントラインではなく、バックオフィスであるコーポレート部門に属していたということです。つまり、ブランドマネジャーのようにマーケティング活動自体を推進するのではなく、「マーケティングをマネジメントする」立場にいたということになります。そして、この「マーケティングをマネジメントする」ことこそが、CMOの本質的な役割なのです。

 

■なぜ日本にはCMOが存在しないのか?

筆者はコンサルタントとして様々なクライアントに対してマーケティング領域のコンサルティングを行っていますが、外資系企業に比べて日本企業は「マーケティングをマネジメントする」ことに対する意識が極めて希薄だと感じています。冒頭に数字を示したように、ほとんどの企業にCMO、すなわちマーケティングを専門としたプロフェッショナル人材が経営層の中にいないという事実が、それを裏付けています。

その主な理由は2つ挙げられます。第一に、戦略的にマーケティングを実施しなくても、技術力や営業力で十分な事業成長が可能だった時代が長すぎたこと。高度経済成長の下では小難しいマーケティング戦略を練るよりも、職人気質のエンジニアたちが技術を磨いて機能改善を進めたり、体育会系の営業マンたちがひたすら汗を流し続けたりした方が、成果に直結しやすかったのです。右肩上がりの成長が終わって生活者のニーズが複雑化し、技術開発の方向性見えづらくなった今でも、過去の時代の価値観や方法論を引きずってしまっているといえるでしょう。

第二に、マーケティング専門人材が育つ環境がないということ。マーケティングというのは様々な企業や業界、製品カテゴリーの経験を経て、初めてその真髄を理解できるという性質を持っています。そのため、例えば一社だけでの経験では、その企業特性や事業特性の影響が大きすぎて、汎用的なスキルにまで昇華させづらいのです。終身雇用を前提とした日本企業の中では、十分に幅広いマーケティング経験を積むのは困難です。さらに、多くの企業ではマーケティングとセールスあるいはプロモーションの区別が明確でなく、部署名こそ「マーケティング」と名乗りながら、実態としては販売支援機能や広告宣伝機能のみを担っているということもめずらしくありません。

最近では、ようやく日本でもCMOという肩書を持つ人材も少しずつ増えてきてはいますが、そのような方々の多くはP&Gやコカ・コーラなど外資系消費財メーカー出身のプロフェッショナル人材が多く、単一の日本企業の中でキャリア形成をしてきていないという特徴があります。

 

■解決策としてのCMOオフィス

日本の企業文化にこれまで存在しなかったものを今になって急に導入するということは、決して簡単なことではありません。とはいえ、マーケティング力の向上は多くの日本企業に共通する課題だということは自明であり、何らかの対応策が求められます。では具体的にはどのような方法が有効なのでしょうか。

日本におけるCMO研究の第一人者である一橋大学の神岡太郎教授はこう述べています。「CMOという概念が日本企業に浸透し人材が育つまでの前段階としては、CMOの役割を機能と捉えて、チームとして実現するアプローチが効果的。このCMO機能こそが、CMOオフィスと呼ぶべき組織である。」
筆者自身もこの考え方に深く共感しています。日本においてマーケティングのプロフェッショナル人材は極めて希少であり、そのような人材をピンポイントでヘッドハンティングして自社のCMOの席に座らせるというのは、現実的には難しいという企業がほとんどでしょう。

であるならば、やはり神岡先生の言う通りチームとして実現するのが現実的です。基本的なメンバー構成としては、自社内の次世代CMO候補と、外部のマーケティングやブランディングの専門人材との混合チームであるべきです。これをCMOオフィスという社長直轄の新組織として発足させ、全社最適視点でゼロベースから全社のマーケティングのあり方を見直すのです。

本セミナーでは、このCMOオフィスについて、より詳細な組織要件や活動内容について、ご紹介させていただきたいと思います。

 

【参考文献】
※1) 経済産業省「消費インテリジェンスに関する懇談会 報告書 ~ミクロのデフレからの脱却のために~」 p17

http://www.meti.go.jp/press/2013/06/20130619002/20130619002-4.pdf

 


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