アベノミクスの3本の矢が話題になっています。第一の矢が金融政策、第二の矢が財政政策、そして第三の矢が成長戦略です。中でも最も難しいと言われる第三の矢の成長戦略ですが、まだまだ目に見える成果が出るところまでには至っていないようです。

そもそも成長戦略の主体は基本的に民間企業です。政府の役割は規制緩和などによって環境を整えるところまでであり、それを原動力として自社の成長に取り込めるかどうかは企業の経営力、とりわけマーケティング力にかかっているのです。

例えば、アベノミクスの重点分野の1つに「ロボット革命」があります。様々な法整備などの環境作りはもちろんありがたいことですが、より重要なことは事業主体である企業がロボットという新しいテクノロジーを自社の成長のためにどう使うかです。すぐに思いつくのは、産業用ロボットなどを活用することによって人件費を削減し、製造コストを効率化することでしょう。しかし、これは単なるコスト低減であり、真の意味では成長戦略とは言えません。確かに収益性は高まるかもしれませんが、中長期的に日本経済を成長させるほどのインパクトは期待できないと思います。

真の成長戦略とは、顧客に対して新しい価値を提供し、トップライン(売上)を伸ばして事業を拡大することです。ロボットの例で言えば、ロボットを使ってどのような新しい製品やサービスを生み出せるかというのが、企業にとって最も重要な課題となるはずです。

「そんなこと本当にできるのだろうか・・・?」「どうせ自分の会社には無理だろう・・・。」多くの人がそういう不安にかられてしまうかもしれません。しかし、実は既にこれを実践しようとしている企業の事例があります。

例えばソフトバンクは、2015年2月に人型ロボット「Pepper」を発売します。このロボットは、家庭向けのコミュニケーション用ロボットであり、何か作業をしたり物を運んだりするというような従来のロボットとは一線を画するものです。家庭でロボットとコミュニケーションと言われても、本当にそんなニーズがあるのかと疑問を抱く方も多いかもしれませんし、本当にうまくいくかどうかはわかりません。であるとしても、これこそまさに新しい価値創造へのチャレンジであると言えるでしょう。

また、ハウステンボスは2015年7月に、「変なホテル」という名称で低価格のホテルを開業します。なんとフロントやポーター、清掃などをロボットが担うことになるそうです。もちろん費用削減という側面もあるでしょうが、それ以上に、これもロボットを活用した新しい価値を提供するための試みであると言えるでしょう。

このように、成長戦略を実現するには政府による環境整備のみならず、民間企業の柔軟なマーケティング発想による価値創造が不可欠です。「Pepper」や「変なホテル」のような新しい製品やサービスのアイデアは、マクロ経済政策の視点だけでは決して生まれてきません。その他の重点分野である農業や医療介護などについても同様のことが言えます。

日本の成長戦略を実現するためには、政治家や経済学者、経営者のみならず、企業のCMO(最高マーケティング責任者)、あるいはマーケッターこそが鍵を握っているのです。