バリューコマース株式会社は、商号を変更し、アフィリエイトサービスを提供しはじめて20周年を迎える2019年に向けて、インターナルブランディングに取り組んでいる。前回は同社の代表取締役社長である香川仁氏に、インターナルブランディングを推進してきたこの1年を振り返りながら、現在の心境を語っていただいた。 第3回では、同社の取り組みをどのように受け止め、ともに“拓いて”いったのかについて4名の社員にうかがった。



●『ともに拓く』の受け止め方は千差万別

新しい企業理念『ともに拓く』を聞いたとき、アフィリエイト本部コンサルティング1部の部長を務める土橋崇之氏は、しっくりこなかったと言う。

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アフィリエイト本部 コンサルティング1部 部長 土橋崇之氏

「私たちは日本で最初にアフィリエイトを始めた企業として、この業界を開拓してきたという自負があります。そして今後も新しいことに積極的にチャレンジできる開拓者でありたいと考えています。だから“拓く”という言葉はすんなりと受け止められましたが、 “ともに”という言葉には違和感を覚えました。 開拓者とはトップをひた走る人のことです。先陣を切るのは常にトップだけなので、一緒に進む人がいたら、それは開拓者とはいえません。だから2つの言葉がうまくつながらないと感じました」(土橋氏)。

土橋氏は、インターナルブランディングを推進する以前に、同社がスローガンとして掲げていた『Your Success is Our Value』について触れる。 「社員の思いをひとつにするためには、もう少しメッセージ性が強くて、社員の考えの軸になるような言葉が欲しいと思っていましたし、インターナルブランディングを推進させるために、何か新しい試みを行うことは、いいことだと大歓迎です。ただ、私が入社した10年前から掲げられていた『Your Success is Our Value』のほうが、馴染みがあるし、しっくりきていたのは事実です」(土橋氏)。

一方、土橋氏と同じくコンサルティング1部に所属する青木亜友美氏は、「ともに拓く」を好意的に受け止めたようだ。 「土橋さんの話を聞くと、確かにそうだなとは思いました。しかし、先頭に立つ開拓者は1人かもしれないけれど、開拓者が開拓したことを実行していく過程においては、さまざまな人が関わっていきます。そう考えると“ともに”も受け止めやすいと思います。
私は2017年に転職してきたのですが、以前勤めていた会社は理念経営をとても重んじていたこともあり、企業理念のもと社員が思いをひとつにすることが、とても重要なことだと理解していました。それもあり、新しい企業理念を素直にいいなと思いました。 ただ、発表があった後に周囲の人たちと『ともに拓く』について話したわけではないので、個々がどう受け止めたのかはわかりませんでしたが」(青木氏)。

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アフィリエイト本部 コンサルティング1部 チームリーダー 青木 亜友美氏

口には出さなくとも、「いったい何をやっているのか?」「意味がわからない」と思った社員は少なからずいたはずだ。そして実際に、あらゆる施策とあわせて実施した社員アンケートにもそうした言葉が見られた。インターナルブランディングを推進していく過程では、提示された企業理念の意味や、インターナルブランディングがなぜ必要なのかが理解されないといった空回りの期間、つまり【失笑期】が多少なりとも続く。【失笑期】に耐えられず、途中で諦めてしまう企業も多い。 vc_image
※図1 バリューコマース原案・博報堂コンサルティング作図

「全員が納得できるものを出すのは難しい。だから納得できていない社員がいても仕方ないし、私は新しい企業理念を浸透させていく立場にあります。自分が納得いかないからといって、『ともに拓く』を拒絶して何も行動しないわけにはいきません。 そこで考えたのが自分なりの解釈に置き換えることです。自分がアフィリエイト部の中でも先陣を切って開拓していけるような人材になりたいという思いは変わりませんが、私には部下がいるので、その部下たちを引っ張りながら開拓していくと解釈すれば、 “ともに”という言葉を受け止められるなと考えました。 言葉の定義は解釈次第で変えられます。それよりも重要なのは、どうやって浸透させるかです。そこの議論のほうが何倍も重要です」(土橋氏)。

●本音と建前、その建前を崩すきっかけに

『ともに拓く』に関しては、それぞれに受け止め方が違ったものの、同社が推進していこうとしているインターナルブランディングに対して、社員間の理解が深まった出来事がある。それが部門ワークショップだ。ECソリューション本部ソリューション推進部セールスプロモーション2チームに所属する堀口直樹氏は、こう話す。

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ECソリューション本部 ソリューション推進部 堀口直樹氏

「部門ワークショップが開かれる前は、社員同士で業務以外のフランクな会話を積極的にしたことがなかったように思います。社内での会話の中心は、当然ですが業務のことです。ブランドコンセプトに関する話や、社員同士のコミュニケーションや、士気を高めていくにはどうすべきかといった話は後回しになりがちです。 ですが部門ワークショップでは、自分たちの部門のキャッチコピーを考える過程で、業務のことだけでなく、『ともに拓く』についても話しました。福利厚生の充実度や、個々が普段から何を考えているのか、また将来のキャリアについての不安といった話まで、何でもフランクに話し合いました。
誰でも本音と建前があります。部門ワークショップ内で話されたことは絶対に口外しない、という場を提供されたことで、社員の多くが本音の部分をいつもより多く話せたと思います。部門ワークショップが、社内の雰囲気を切り崩すきっかけになったことは間違いありません」(堀口氏)。

ECソリューション本部ソリューション推進部セールスプロモーション1チームのチームリーダーを務める市川賢太郎氏も、堀口氏の話にうなずく。

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ECソリューション本部 ソリューション推進部 チームリーダー 市川賢太郎氏

「当社にはECソリューションとアフィリエイトという2つの本部があります。これまで2つの本部が仕事上で接点を持つことは少なかったのですが、健全な向上心をお互いに高めていきながら、シナジーを生み出すにはどうしたらいいのかといった深い話ができました。 なぜ深い話ができたのかというと、部門ワークショップは自由に話せる場だ、何を言っても「どうしてそんなことを言うのか」とは絶対に言われない、という、安心できる雰囲気があったからだと思います。 私たちの部門は『「個」客のHAPPY∞』という、おもしろいキャッチコピーに決まりましたが、結論に至るまでは自分たちも想像していなかったような熱い話が出て、すごく新鮮でした」(市川氏)。

ECソリューション本部
部門ワークショップにて

土橋氏も「新鮮さを感じた」と部門ワークショップを振り返る。 「普段はそこまで積極的に意見を言う印象がなかった新卒の社員が、もっと情報を共有してもらえないと仕事がやりづらいと正直に話してくれて新鮮でした。部門をまとめる側として、重要度の高い見過ごせない意見、今まで思ってはいたけれど言えなかったんだろうな、という意見が多く出たと感じています」(土橋氏)。

●社内で“拓かれた”こと

新鮮な気づきがあったと社員の多くが感じている部門ワークショップを終え、その場で話し合った各部門のキャッチコピーをまとめた「“ともに拓く”部門ワークショップ宣言集」が、社内で配られた。 「他部門が何を考え、どんな事業を行っているのかを知れたのはすごく良かったです。他部門のことを知ることで、今後どのように連携していけばいいのかを考えるヒントが得られました。 今までじっくり話を聞いたことがなかったけれど、この人は自分と似たような考えを持っているんだなと確認ができたことも良かったと思います。今まで知ることがなかった周囲の人たちの価値観を知ることで安心できた、というのか、そのあと社内で話がしやすくなったんだと思います。

それから部門ワークショップの後に、企画部主催でミーティングが開催されました。当社のサービスについて話し合い、課題を挙げていったのですが、こうしたミーティングは今まで開催されたことがなかったので、少しずつ社内の雰囲気が変わってきているのかなと感じましたね」(堀口氏)。
「全社ミーティングであるカンパニーワイドミーティングで、担当している新サービスについて話をしました。サービスの内容やお客さまからの反響などをまとめて、社員の前でプレゼンしたのですが、入社して初の経験でした。こうした動きも社内が拓かれてきた結果でしょう。 私はECソリューション本部に所属しているので、アフィリエイト本部の動きやサービス内容について疎いところがあります。だから、自分が所属するECソリューション本部の情報を共有する機会に恵まれたことを、とても良かったと思います。 インターナルブランディングを行なったからといって、社内の雰囲気が劇的に変わるわけではありません。しかし徐々に変わっていくことで、今まで弱かった部門をまたいだ事業展開や、協力体制が構築されていくと、当社は大きなシナジーを生み出せるはずです」(市川氏)。

社内に“拓く”ことは、業務上のシナジーを高めるだけではない。青木氏は期待をこめて、こう話す。
「前職では理念がとても浸透していました。思考の軸に理念があり、理念を念頭に置いて考えれば答えはこれだと、迷わず判断できました。例えば後輩を諭すときにも、理念にそぐわないということで、明確に判断基準を伝えることができます。理念は社員教育に使えるんです。 やはり社員が同じ方向を向いていないと、会社は潜在的に持ってる力を発揮できません。もともと当社の社員は真面目で誠実な人が多いと感じています。そんな社員が同じ方向を向いて、一緒に進んでいけたら、新しい成果を出せる会社へとより成長できると思いますね」(青木氏)。


『ともに拓く』がお披露目された【失笑期】から、部門ワークショップを通して、これまで蓄積してきた思いを社員が口にし始めた【発散期】まで。社員の方々に振りかえっていただいた第3回に続き、第4回も社員の方々に話を聞きながら、インターナルブランディングを実施することで、組織がどのように変わっていったのかを追っていきたい。

>>第4回に続く

■「インターナルブランディングで現場から起こす企業変革」連載