重要な局面で使われる「戦略」と「ビジネスモデル」

ビジネスモデルという言葉を、会議や資料の中でよく見かけることと思います。新事業プランの上申過程や経営会議など、企業成長を導くための重要な局面で使われることでも多いでしょう。
ただ、ビジネスモデルという概念をよく耳にするようになったのは、ここ10年以内の話だと思います。それまでの間、そして現在も、同じビジネスの重要な局面で使われ続けているのが「戦略」という概念です。(ここでの戦略は特に競争戦略に的を絞ってお話しします。)

さて、「戦略」と「ビジネスモデル」の概念にはどのような違いがあるのでしょうか。普段のビジネスの中では何気なく使っているこれらの概念に着目してみたいと思います。小難しい話となりますが、お付き合いください。

学者が切り開いた「戦略」

これらを紐解くためには、まずそれぞれの概念がどのように使われるようになったのかという、その出自の違いを理解する必要があります。今回はこの「戦略」と「ビジネスモデル」の出自の違いを説明します。
戦略(Strategy)という概念は、高名なイゴール・アンゾフ氏が1960年代に軍事用語から取り込んだものです。ビジネスの世界での戦略とは、「市場における競争」、つまり、いかに敵の企業に打ち勝つのかという考え方です。
そのため、敵の企業に打ち勝つための「戦略」は、売上やシェアで評価する方法が多く用いられてきました。アンゾフ氏が先鞭を着け、その後、マイケル・ポーター氏、ジェイ・バーニー氏が花開かせた戦略論は、まさに学者が主体で理論化が拡がった世界でした。

市場の停滞・変化がもたらした「ビジネスモデル」

他方、「ビジネスモデル」という概念は、ITベンチャー企業をはじめとした、実業に馴染みが深いビジネスマンが使い始めたものです。正確にいつ頃から使われ始めたのかは不明ですが、2000年代のITバブルの際に盛んに使われるようになった比較的新しい概念です。投資を集めるためにネットビジネスの事業プランを説明する場面などで利用されてきました。バブル崩壊と共に一度は陳腐化しましたが、現在、再度注目を集める概念となっています。

その背景としては複数あります。1つはインターネットの登場など非連続の技術革新です。それによる従来の業界の垣根の消滅や新業態の出現、異業種からの参入など、事業環境の変化の速さが増しており、従来の競争の枠を超えて事業成長を考える必要が生まれてきたからです。

他の代表的な理由としては、業界の成熟が挙げられます。業界が成長していたころは、シェアを上げれば儲けはついてきましたが、業界が成熟すると、競合に打ち勝ちシェアを伸ばしても儲けにくい状況が生まれたのです。これらは顧客(特に生活者)に選択肢が増え、より商品・サービスの価格・性能に厳しい目を持つようになることで、シェアを伸ばすために今までよりもコストを費やさなければいけない状況になったのです。

こうした今までとは違う戦いの中で求められたのは、シェアではなく利益であり、これこそがビジネスモデルの評価となります。競争相手が自社と似ている状況から、全く業種や業態も違う企業が競争相手になることで、自社がどのようにそのビジネスに対峙し、臨んで行くのかというビジネスのそもそもの設計思想こそが重要になります。これこそが再度「ビジネスモデル」が注目される理由になったのです。
これはまさにビジネスマンの現場が主体となって拡がった世界であり、学者による理論が追随する世界となっているのです。

 
ビジネスモデルと競争戦略の違い
図:ビジネスモデルと戦略の違い

「戦略」と「ビジネスモデル」の出自の違いはご理解いただけましたでしょうか?次回は、これらの定義を中心にお話ししたいと思います。