1.なぜ、アセアン市場が注目されるのか?

2012年の下期以降、日本企業の中国への投資は伸び悩む一方で、アセアン諸国向けの直接投資が増加しています。JETROレポートによると、2013年の日本からのアセアン向け直接投資額は、前年比の2.7倍と急成長し、史上初の2兆円台に到達しており、その規模は、中国向け投資のなんと2.6倍に達したそうです。
中国市場も依然として魅力的な市場であることは変わりませんが、領土問題などの政治的なリスクを抱え、政府の規制も厳しい中国に比べ、親日的なアセアン市場への日本企業の投資は、今後も加速するものと思われます。
その投資が狙っているのが、急成長を遂げる「中間所得層」です。2011年のJETROレポートによると、インドネシアで、中間層と呼ばれる世帯可処分所得50万円~350万円の人口は、2009年の約8000万人から、2020年に2.4倍の約2億人に急増します。さらにベトナムでは、1700万人から3倍強の5500万人に激増すると予測されています。

2.多様なアセアン生活者

一方で、忘れてはいけないのはアセアン市場が決して一つの国ではないということです。異なる言語、異なる宗教、異なる人種構成を持つ独立した国々の連合体であり、所得水準などの生活環境も大きく異なります。商習慣も異なれば、法律や制度などのインフラのレベルも様々です。それだけに、進出を検討する段階から、各国の市場特性をしっかりと把握しておかなければ、投資を回収するだけの持続的な利益を上げることが難しくなります。
ここでは、博報堂が毎年世界主要36都市において実施しているGlobal HABIT調査の一部を利用して、アセアン生活者の違いをいくつかご紹介します。

1) 変化を求めるベトナム人。自分らしさを求めるマレーシア人

ベトナム人は、他の5カ国と比べ、安定した生活よりも、新しい刺激を求める気持ちが強いため、新しい商品やサービスを貪欲に採用する傾向があります。一方で安定志向が強いのは、フィリピン人とマレーシア人です。特にマレーシア人は、経済的な充足よりも、シンプルで自分らしい生活を求める傾向が強く出ています。

2) 「家族第一」のインドネシア人

なりたい自分像を聞くと、男女ともに「家族を一番重視する」と答える人が最も多いのがインドネシア人。逆に「仕事で成功したい」という人は最も少なく、仕事よりも家族という志向が明確です。
その他、タイ人は「寛大な人」、フィリピン人は「教養ある人」、ベトナム人は「エレガントな人」になりたい人が多いのが特徴です。

3) 貯金に積極的なフィリピン人。貯金より消費のタイ人

「毎月、貯金をしている」「投資情報に興味がある」という人が最も多いのがフィリピン人です。その一方で、毎月貯蓄をしている人が最も少ないのがタイ人とマレーシア人。特にタイ人は、「普段着」「外食」にお金をかけている人が他国に比べて多く、貯蓄よりも日々の生活にお金をかけるという傾向が見受けられます。

4) インドネシア人は誠実な企業姿勢、ベトナム人はCSR活動を期待

知名度と企業規模が良い企業の評価として重要なのは、アセアンの6カ国共通です。これに加えて特徴的だったのは、企業としの社会性、倫理性を求めるインドネシア人とベトナム人です。
インドネシア人は、情報公開の徹底や社内従業員を差別しないといった、企業姿勢の誠実さを重視する人が多い一方、ベトナム人は、寄付活動や社会貢献活動といったCSR的な活動を行う企業を高く評価する傾向が出ています。

アセアン市場で爆発的に成長する中間層の心を掴むためには、このような各国の生活者意識の違いを的確に把握した上で、各国別に的確なマーケティング活動を展開することが必要となります。

 

グラフ: アセアン諸国の世帯可処分所得構成の推移

ASEAN記事_図1

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