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博報堂コンサルティング出身者による対談

「コンサルティングの卒業後のキャリアとして事業会社の経営に携わる人は多い」
この度、博報堂コンサルティングの卒業生3名の対談がコンサルティング業界入門の定番書とされる“コンサルティング業界大研究(ジョブウェブ コンサルティングファーム研究会編著)”に掲載されました。博報堂コンサルティングを卒業した先輩方の考え・想いを是非御覧ください。

※書籍「コンサルティング業界大研究」(産学社刊)に掲載された内容を転載しております

コンサル“後”のキャリアを考える

コンサルティングファームで学べること、学べないこと

  • RYOTA TANOZAKI

    田野崎 亮太

    フェイスブックジャパン 執行役員
    一橋大学卒業、シカゴ大学大学院修了(MBA)。大学卒業後、サントリーに入社。その後、博報堂コンサルティング他複数の経営コンサルティング会社にて企業変革サポートに従事し、トランスコスモスを経て現職。

  • TSUYOSHI WAKAHARA

    若原 強

    コクヨ ワークスタイル研究所所長
    東京大学大学院修了。SIer、経営コンサルティングファーム、博報堂コンサルティングを経て、コクヨに入社。社内マーケティング改革、アジアフラッグシップショールーム構築等に従事し、現職。

  • KUNIAKI MATSUMURA

    松村 有晃

    楽天 執行役員・顧客戦略統括部ディレクター
    東京大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー、博報堂コンサルティング、ベンチャー企業を経て、楽天に入社。楽天市場事業のマーケティング部長、顧客戦略部長、コーポレートの総合企画部副部長を歴任し現職。

  • コンサルティングファームを経て、事業会社へ

    まず大学卒業後のキャリアを自己紹介も含めて簡単にお願いします。

  • 田野崎

    田野崎

  • 私は経済学部出身で、ビール好きだったのと、マーケティングが強いことからサントリーに入りました。本当は、マーケティングの仕事に携わりたかったのですが、人事部が自分の強みを見抜いてか、営業部門に配属され、5年間流通の営業をしました。その後はいくつかのコンサルティング会社を経験しました。最初は、ベリングポイント(現:PwCコンサルティング)というコンサル会社に入り、雑誌記事がきっかけで博報堂コンサルティングに行き、現場に近い仕事がしたくてフロンティアマネジメントという事業再生ファームに入りました。その後、トランスコスモスという会社でEコマース事業に取り組んでいた際にフェイスブックからお声がけいただきました。現在は、フェイスブックジャパンの事業戦略の構築とフェイスブックご利用の広告主のお客様へソリューションを提供するプロフェッショナルをリードしています。

  • 若原

    若原

  • 私は大学卒業後、電通国際情報サービスという会社でシステムエンジニアとして働き、次にコーポレート・バリュー・アソシエイツというコンサルティングファームに入社しました。5年近くさまざまな案件をこなすうちに、関心が強く湧いたマーケティング分野を極めたいと思うようになりました。そこでマーケティングに特化したファームを探し、博報堂コンサルティングを見つけ入社、2年半くらい勤めました。その後事業会社で働くことにも興味が生じ、現在はコクヨに転職、ワークスタイル研究所で所長をやっています。ここでは国内外における先進的なワークスタイル、ワークプレイスの事例収集と、そこから分析するトレンドの発信などを行っています。

  • 松村

    松村

  • 私は建築学科の出身ですが、学生時代のさまざまな経験から世界を動かすビジネスのメカニズムを学びたいと思い、マッキンゼー・アンド・カンパニーに就職しました。戦略立案に従事するなかでブランド戦略に関心を強くし、博報堂コンサルティングに。そこで働くうちに事業主体になりたいと思い、ベンチャーでの事業立ち上げに参画しました。ベンチャーで貴重な経験を積みましたが、大きく社会に貢献するには大組織を動かすことが必要と感じ、楽天に転職しました。楽天では7年間、楽天市場事業のマーケティング変革を行い、現在は事業横断的なサービスや顧客育成プログラム、ブランディングなどを担っています。

  • コンサルティングファームでの経験は、
    実業にどう活きるか

    コンサルタントとしての経験とその後の実業とのつながりをお聞かせ願えますか。

  • 田野崎

    田野崎

  • ベリングポイントでは、クライアントの経営課題を構造化していくロジカルシンキングやさまざまなフレームワークの使い方などを徹底的に鍛えられましたね。業務改善を実現するシステム導入支援では、クライアントの業務プロセスを詳細に把握しながら、個々のプロセスに内在する課題を特定し、新たなシステムでいかに解決するかを検討していきます。そのような案件を遂行する上では、高い理性が求められます。一方、博報堂コンサルティングでは「顧客視点」を非常に深く学びました。どのようなプロジェクトであっても、真の顧客は誰なのか、顧客にとっての価値は何か、価値をいかに創出するのかといったことを突き詰めて考えていました。博報堂コンサルティング以上に顧客視点を深く追求するファームは他にないと思います。この顧客視点から企業のブランディングやマーケティングの戦略を描き、実際に新しいブランドを世に出し、プロモーションを打つところまで実行支援する経験は、実業に大いに生かせています。

    田野崎
  • 若原

    若原

  • コンサルタントの頃はメソドロジーの習得に加え、常に広い視野と高い視座をもつことを意識して、経営陣とともに経営課題の解決に奮闘していましたね。その経験から、自ら事業を推進する上でも、常に個々のタスクの意味を“企業分母”で考える癖がつきました。実業において、仕事の手段と目的を取り違えないというのは重要なことです。

  • 松村

    松村

  • 事業会社では実行力に優れた人材が多い一方で、考える機能と人材は不足しているので、コンサル出身者は貴重ですよね。コンサル出身者は、物事の本質を深く考える力、そして有用で実行可能な見立てを資料に落とし、メンバーやトップマネジメントにコミュニケーションして動かしていく力に特長があります。社内打合せの場面などで、参加者の意見や全体の状況を整理することでインパクトにつながる貢献ができるのを感じます。調査分析、戦略立案、課題発見と解決策の導出、プロジェクト管理など、コンサルティングファームで集中的に鍛え上げられるスキルは、実業に広く貢献できるものです。これらのスキルは事業会社だと特に意識する機会がなければなかなか身につかない。事業会社への転職当初から役に立つ技をもっていることは精神衛生上も良いです(笑)。

  • 博報堂コンサルティングで学んだこと
    左脳と右脳のバランス

    皆様の共通点は、博報堂コンサルティングで働いていたことです。その経験は、どのように影響していますか。

  • 田野崎

    田野崎

  • 先ほども少しふれましたが、私が博報堂コンサルティングで培った特徴的なものは「顧客視点」ですね。顧客視点で全ての物事を発想する、という考え方は今のビジネスの基盤です。フィットネスクラブの顧客調査を例に出すと、顧客満足度やロイヤルティーなどに影響を及ぼすものは、料金体系や施設設備、スタッフ対応などさまざまです。顧客視点の分析によって、実は顧客間の関係性が重要だと発見し、フィットネスクラブの仕組みに適切な改善案を導入することができました。こうした成功体験を積むことで、物事のすべての改善策、戦略を構築する際に、顧客視点、つまり、クライアントのサービスを受けるお客様は誰で、何に価値を置くのか、といった本来あるべき視点から考えるようになりました。そして、もう一つ特徴的なのは、クロスファンクショナルな仕事の進め方ですね。博報堂コンサルティングでは博報堂や他の協力会社と一緒にプロジェクトを進めることが多く、コンサルタントは異なる企業の多様なスキルや経験を有するメンバーを束ねて、高度な成果を上げる必要があります。このようなプロジェクトを進めるなかで、コミュニケーション能力やマネジメント能力の土台を構築できたと思います。

  • 若原

    若原

  • 顧客視点は博報堂コンサルティングの本当に大きな特徴ですね。それ以外だと、「左脳と右脳を上手くバランスさせて人を説得する」というスキルも徹底して学びました。例えば博報堂コンサルティングに入社した当初、従来のファームのやり方で文字メインの資料を作成していたところ、先輩から「こことここはとにかくビジュアルを入れてみろ」と助言を受けました。情報の量と構造は文字だけで十分MECE(ミーシー)※だと思っていましたが、ビジュアルをうまく入れると受け取られ方が確かに全然違う。人はロジックや理屈だけで説得できるとは限りません。彼らの理性と感性を両方刺激することで、心の底から納得させて動かすことができます。現職では外部講演も多いのですが、新規性の高い考え方や複雑な概念を納得感を持って伝えたいときに、このスキルは大変重宝しています。

    ※ MECE:Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive の略。互いに重複せず、全体に漏れがない状態のこと。

    若原
  • 松村

    松村

  • 私もそう思います。一般のコンサルティングファームは左脳が突出している分、実際のビジネスのさまざまな要素を切り捨てて課題を解決する仕事になりがちです。それでは結局、現場や消費者心理と乖離してしまう。おもてなしの心や美意識のようなものがすごく大事だと思います。日本の事業会社は消費者志向が弱い傾向もあります。消費者は頭で理解しても共感しないと動かない。具体的なマーケティングやサービスを思いつくには論理的な思考だけでは困難です。その点、博報堂コンサルティングの人は右脳で考えることも得意であり、生活者の視点で消費者心理に向き合うことができる。左脳によって導かれる必然性と、右脳によってとらえる可能性の両方を組み合わせて共感を呼ぶストーリーを作れてこそ、ビジネスで成功するコミュニケーションができるのだと思います。また、博報堂コンサルティングはクライアントの全社・事業戦略よりもさらに上流のビジョンづくりやブランディングなどに取り組むので、根源的な部分に興味がある自分にとってやりがいのある経験でした。

  • 課題に応じて、
    コンサルティングファームを選ぶべき

    視点を変えて、事業会社の立場からコンサルティングファームを使う際のアドバイスをうかがえますか。

  • 若原

    若原

  • コンサルティングファームを使う1つのメリットは、同じ意見でも外から言ってもらったほうが社内に対してインパクトがあり、その役割を担ってもらえるということだと思います。なので、社内を変えたい、動かしたいテーマに応じて、どのファームのイメージだと最も箔が付くか、という観点で選ぶのも良いと思います。たとえば、ブランディングの話であれば左脳重視のファームよりも、博報堂コンサルティングに依頼したほうが、説得力が増すのではないでしょうか。

  • 田野崎

    田野崎

  • まず、コンサルティングを依頼する前に、社内で経営課題の論点についてよく考えることが第一です。たとえば、相談したい課題は機能軸なのか、産業軸なのか、あるいはグローバルの問題なのか。論点によって依頼すべきコンサルティングファームは異なります。そして最後は、人ですね。コンサルティングの品質は、ファームではなく、コンサルタントに紐付いています。お仕事を通して優秀だと思えるコンサルタントに出会ったら、その人に継続して頼むことは多いですね。

  • 松村

    松村

  • 私も人で見ることが多いです。コンサルティングファームの情報は、専門分野やコンサルティングフィーを参考にする程度です。特定の個人の紹介などが多いので、会社に発注するという感覚は薄いです。もちろん、リブランドのような大きな案件は包括的な能力をもち信頼できるファームに頼む、ということはあると思います。

  • コンサルタントとしてのキャリアをどうとらえるか

    最後に、コンサルティング業界を目指す志望者にアドバイスをお願いします。

  • 若原

    若原

  • 個人的には、コンサル経験をその後の自分のキャリアにどう活かすかを良く考えるべきだと思います。今後、マルチキャリアやパラレルキャリアが当たり前になっていくなかで、キャリアプランニングの重要性は増していきます。個人的には、若くて基礎体力のあるうちにコンサル経験を積むほうがいいと思います。コンサルタントのスキルや思考法は汎用性が高いですし、若いうちにハードワークを経験しておくと、その後頑張れますからね(笑)。

  • 田野崎

    田野崎

  • コンサルの向き・不向きについて、3つ言いたいことがあります。まず、考えるのが好きな人は向いています。実際の仕事でも思考の深さで成果に大きな差がつきます。2つ目は若原さんもふれていましたが、体力です。コンサルの仕事は必然的に長時間になりますので、体力は必須です。そして3つ目は、自己成長の意欲とスピードです。普通の事業会社だったら数十年働いても取り組めないような経営層が抱えている課題に対して、入社1年目から取り組めることが、この業界の大きな魅力の1つだと思います。しかし、急速に変化し続ける経営環境の中で、企業の経営課題はより一層複雑なものになってきています。そのような状況で短期間で課題解決への糸口を見つけ、実行を支援していくためには、クライアントが変化するスピード以上の速度で自ら成長し続けなければなりません。成長意欲が高いだけでなく、高速で成長できる努力家でないと勤まる仕事ではないです。

  • 松村

    松村

  • 私の本音としては、コンサルティングファームは「企業経営のトレーニングの場」だと思っています。能力を鍛え、小さくまとまらないようにある種の偏りをもついい機会なのではないかと。そういう意味で、いずれ起業を目指している人にも経験しておくことをおすすめしますね。

    松村

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